入川 枕が皆さんと漫画との縁を1つずつ丁寧に結ぼうとする本企画。
第7回は岩原 裕二さん作「Dimension W」です。
書籍情報
出版社:スクウェア・エニックス
レーベル:ヤングガンガンコミックス
連載状況:完結
単行本:全16巻
「紙で読んでいる漫画」の企画概要はこちらの投稿をご覧ください。
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Dimension W 3つの推しポイント
串が武器!?主人公がSFしていないSF
SFバトル漫画と聞いて、主人公は何で戦うと妄想しますか?
イカした効果音で出力されるビームな剣、度を越えて変形する銃、童心へ直に訴えかける要素を詰め込んだ武器こそSFバトル漫画の醍醐味ですよね。
Dimension W 2巻の表紙を飾る主人公、マブチ・キョーマ。
彼の武器はSFらしからぬ赤い法被に仕込んだ串です。
物語の舞台は2072年。
二コラ・テスラが描いた夢の先に実現する世界システムにより、地球のどこにいてもエネルギーが得られることが保証された世界。
世界システムのエネルギーを仲介するコイルと呼ばれる装置が全てを動かす世界で、マブチ・キョーマは串を武器に不正コイルの回収屋をしています。
回収屋の仕事の最中、マブチ・キョーマはDimension W 1巻の表紙を彩るヒロイン百合崎ミラと遭遇し、物語が動き始めます。
百合崎ミラ「…………アナタはさっきの…焼鳥屋さん!」
マブチ・キョーマ「回収屋だ回収屋!」
Dimension W(1) File.03 始まりの灯
ヒロインに焼鳥屋さん呼ばわりされたマブチ・キョーマの極意は投擲。
王道のバトル漫画なら3~4番手に甘んじてしまいそうな戦闘スタイルですが、マブチ・キョーマは投擲でDimension Wの主役を確かに張ります。
—分かりやすい格好良さではないですよね。
岩原
むしろ、どちらかというと格好悪い面があるキャラクターですから。
ストレートに格好いいキャラクターにはしたくなかったので、そういう意味での難しさはあります。
Dimension W(9.5)次元管理局調査報告書
描きにくいキャラクターにマブチ・キョーマを挙げ、上記のように語った岩原 裕二さん。
武器のチョイスにもこのような考え方が反映されているのかもしれません。
マブチ・キョーマは正確無比なコントロールで串を投げます、とにかく投げます。
串が投げられる毎に事態は動き、物語が転がる。
次第にあなたは、マブチ・キョーマが串を投げる選択をしたときに、可能性を期待してページを捲るようになります。
読む前から面白い!全巻「仕掛け付き」の表紙
Dimension Wの単行本の表紙には、全て蓄光の仕掛けが施されています。
紙で読んでいる漫画で紹介するにはピッタリの推しポイント、電子書籍では成立しない遊び心ですね。
私のお気に入りは4巻の表紙。
抱えられた花々が光るようになっており、芸術点が高いです。
蓄光の仕掛けがあるオモチャを持って、照明のスイッチに手をかける瞬間を思い出しました。
ただ、新品の単行本に巡り会うのは困難、リンクが全て【中古】なのも同様の理由です。
漫画は実店舗派の私も東京在住の頃は血眼になって探しましたが、結局見つからず…。
13巻以降は中古本で揃えることになります。
まさか社会人として挫折した後、戻った岐阜の地で続巻の発見に至るとは思いもしませんでした。
新品の単行本が揃っている本屋さんがあれば、ぜひ私にも教えてください。
可能性の使い方
無限定に使えそうで、意外と制約の多い可能性。
辞書で引くと、下記のような説明になっています。
可能性(かのうせい)とは、ある事象が起こる未来の見込みや、特定の結果が得られる可能な状態を指す言葉である。
weblio辞書
可能性がキーワードとして最初に明示されるのは私のお気に入りである4巻。
以降いろんな意味で現れ、物語の進行で結われるそれらは、ブレない一本の太い軸となります。
数年越しにDimension Wの完結を見届けたとき、私は可能性という言葉の本質を垣間見た気がしました。
1つの言葉に対して、これほど物語による表現の余地があるのかと感銘を受けたことをよく覚えています。
可能性に着目して読み進めると、世界の真実に近づくのも早いかもしれませんね。
一投一投が見逃せない!可能性を見極める異色のバトルSF
今回は岩原 裕二さん作「Dimension W」をご紹介しました。
前回ご紹介した「惑星のさみだれ」はご近所に潜んでいそうなSFでしたが、Dimension Wは近未来にありそうと思わされるSFの基本形。
マブチ・キョーマの投擲はドン引き必至の正確さ。
その一投が何を選択するのか、あなたも見届けてくださいね。
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