入川 枕がみなさんと漫画との縁を1つずつ丁寧に結ぼうとする本企画。
第6回は水上悟志さん作『惑星のさみだれ』です。
上:朝日奈 さみだれ 下:雨宮 夕日 トカゲ:ノイ=クレザンド卿 |
書籍情報
出版社:少年画報社
レーベル:ヤングキングコミックス
連載状況:完結
単行本:全10巻
『紙で読んでいる漫画』の企画概要はこちらの投稿をご覧ください。
この記事を書いた人
3つでサクッと!推しポイント
1.獣と人間、遅効性を帯びた非現実
「我輩はノイ=クレザント卿 騎士である」
「惑星のさみだれ」1巻 水上悟志
1人暮らしの大学生、雨宮 夕日。
ある朝、雨宮が目を覚ますと、傍らに謎の美女…ではなく、足元にトカゲが居た。
しばしの見つめ合いの後、沈黙を破ったトカゲは、己が騎士だと言う。
これが魔法少女ものなら、形容し難い生物が相棒になるのでしょうが…。
現実に存在する獣が、非現実を生活に持ち込んでくる。
突拍子もなく日常に転がり込んでくるSFが、どこか親近感を覚えさせるものに見えてしまいます。
微妙に狂わされる距離感は、物語が進行するに連れて効いてきます。
2.楽器のないロックンロール?
楽器を演奏するキャラクターは登場しませんが、確かなロックンロール要素が物語には染み込んでいます。
ひたひたです。
『the pillows』は枕の推しバンドの1つであり、作中に曲名が登場するロックンロールバンドです。
登場する3曲はこちら。
the pillows『ビスケットハンマー』
the pillows『バビロン天使の詩』
the pillows『Blues Drive Monster』
BUSTERS(the pillows ファンの総称)界隈でも有名な話。
『惑星のさみだれ』のみんなは、他人に譲らずに選び掴まんと考えたり、直感したり…生き様はまさに曲たちを連想させるオルタナティブさです。
音楽から入る漫画選びも面白いかもしれませんね。
曲名がどこに、どのように登場するかは読んでみてのお楽しみです。
目つきが悪いさみだれ?ギターは弾きません。 |
3.大人が見せる背中と若者が見せる明日
雨宮と同じように、ある日とつぜん人語を解する人間以外の何かに巡り会う者たち。
いちばん若い小学生から見たら大人ばかりで、いちばん年を重ねたお爺さんからみたら若者ばかりで、大学生の雨宮から見たら大人も子供もいて…。
彼らの直接的で、不可避で、積極的な関わり合いは、今では少なくなっているのかもしれない。
それらを通して考えさせられる「大人在り方」は、教科書以外のことを教えてくれているようです。
大人たちが背中を見せる中で、若者たちは大人たちに「明日」を見せていきます。
物語の重要な局面の数々で、状況を打開するきっかけになるのが若者たちの明日を手繰り寄せる「成長」です。
大人と若者の相互作用が隣人となったSFにどのような結末と明日をもたらすのか、ぜひお手に取って確かめてください。
さみだれは抱えている地球をどうするつもりなのか…。 |
まとめ
今回は水上悟志さん作『惑星のさみだれ』をご紹介しました。
前回ご紹介した「MOMOモモーthe blood takerー」も時代設定は近いですが、御子神の「刑事」という職業もあり、経験ができそうにない非日常を物語として味わう楽しさが醍醐味です。
他方『惑星のさみだれ』は「自分の直ぐそばにもSFがいるのかもしれない」と思ってしまうような近さがあり、読み進めるほどに無用なドキドキに襲われます。
現実と物語の境界線があやふやになってしまいそうな作品、存分に彷徨っていただければと思います。
枕のブログがきっかけで、誰かが素敵な作品たちに出会ってくれたら嬉しいです。
ではまた。
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